文学フリマ事務局通信

主に文学フリマ事務局代表が書く雑記帳です。

第七回文学フリマ出店参加申込、まもなく終了

第七回文学フリマ出店参加申込は8月11日の24:00で締め切られます

どうぞお急ぎください。


事務局代表より その3

 以下は事務局通信へのコメント等を受けて、事務局代表・望月がみなさまにお伝えするメッセージの第三回目です。第一回目第二回目。コメント(匿名のものを含む)への返信としての意味合いが強いので、「文学フリマ事務局の公式見解」とは趣を異にします

 その点をご了承のうえでお読みください。


 さて、今回実施されるゼロアカ企画では、そのために5ブース分を使用します。つまりこれは一般申込のブースを削ることになり、ひいては抽選率をあげるということでもあります。おそらく他の出店者のみなさんが不満に思うのはその点だと思います。「文学フリマは出店者に負担を強いている」、あるいは「文芸同人誌にとって唯一のイベントだから参加者は事務局の言うことを聞くしかない」という意見もあることでしょう。

 この企画の主旨、意図については第一回目、第二回目に書いてきました。少なくとも私は5ブースを使用するだけの意義はあると思ったから、この企画を実施するのです。ただ、そういった主旨の面以外にも、今回の企画が大きなメリットである部分があります。端的に言ってしまいますが、それは“収益構造の強化・安定化”、つまりお金の問題です。

 たしかに現状では、文章系の同人誌イベントで目に付く存在と言えば文学フリマの名前が挙がるのかもしれません。あとはわずかに同傾向のイベントがあるか、コミックも含む創作オンリーイベントの一画に創作文芸というジャンルがあるくらいでしょう。しかし、過去には文章系の同人誌即売会は他にも存在していました。それが様々な状況で活動休止になっていって、残っているのはごくわずかというのが事実です。

 文学フリマはメディアに取り上げていただく機会が多いので、他の文章系イベントに比べても知名度は高いのは確かです。そのことを「文学フリマはメジャー寄りだ」と誤解している向きもあるようですが、取材や情報掲載はなにも向こうからやってきてくれるわけではありません。文学フリマ事務局は開催の度に100通以上のプレスリリースを各メディアに発送しています。その中でたまたま興味を持ってくれた記者さんや編集者さんが情報を載せてくれたり、取材に来てくれたりするわけです。100通出してせいぜい2~3件程度です。そういう作業の上に「文学フリマ」の知名度は支えられているのであり、その点を批判される謂われはないと思います。

 ただ、そうしたことでそこそこの知名度があるため、文学フリマを文章系「唯一のイベント」というイメージで見ている方は多いようです。

 しかし、私にとって「文芸同人誌にとって唯一のイベントだから参加者は事務局の言うことを聞くしかない」というのは結果論でしかありません。そして運営サイドにしてみれば結果論をあれこれ考察しても意味がないのです。私にとっての問題意識は「なぜ文学フリマが文芸同人誌にとってほぼ唯一のイベントになってしまったのか?」という点にあります。

 それについて身も蓋もない回答を挙げるなら「文芸同人誌のイベントが赤字運営に陥りやすいから」ということが言えるかもしれません。そうなると継続開催は難しいし、単発で終わってしまいます。また、先の【事務局代表より その1】で記述した「一般来場者が減って本が売れなければ出店者は参加しなくなるし、出店者が参加しなくなればその人たちが呼んでいた一般来場者は減る」というイベントの負の連鎖は考えられることです。イベントが「参加者同士の交流」をメインコンセプトにしている場合は来場者数にはこだわらなくて良いのですが、それでも回を重ねてマンネリ化が進めば出店参加者が減っていく事態は避けられないでしょう。

 私は文学フリマを「出店者の同人誌の物々交換イベント」にはしたくないと考えています。ですから、一般来場者に多く来てもらうこと、そしてその来場者に出店者の本をたくさん買ってもらうことを重要視しています。それは長期的に見ても、イベントの成長に必要なことです。一般来場者重視の姿勢がもっとも端的に示されているのが、“サークルカタログの無料配布”です。これにより会場に足を運びやすくすると共に、購買意欲を高める狙いがあります。

 一般来場者から入場料やカタログ代を徴収していないということは、カタログの印刷費は出店者持ちということです。しかし文学フリマでは、来場者が増えて本が売りやすくなれば出店者に還元されるという考えで、あえて出店者の負担としています。カタログに使うお金があるのなら、それで出店者の本を買って欲しい、ということです。カタログを入場チケットがわりにして来場者から費用を徴収するという手法は同人誌即売会の常識ですが、もしも運営予算的に出店者の負担で済むのなら必要性がないことだと思います。運営予算とは関わりなくカタログ代を徴収するべきというなら、それは“常識”ではなく“慣習”であり、そういうものに文学フリマがとらわれる必要を感じません。


 話を元に戻すと、今回のように特別な企画があると、当然話題になりやすく、知名度はあがります。そうなると集客性は高まります。集客性が高まれば出店者の本が売れる可能性は高くなります。しかしそれだけではありません。知名度や集客性の高さがあれば、事務局としては諸方面にカタログへの広告出稿のお願いをしやすくなります。実はこれが参加費以外では重要な収益になるのです。

 会場の拡大と年二回開催で大きな不安要素となるのは予算の問題です。ここでお伝えするようなことではないのかもしれませんが、参加費の値上げやカタログ代金の徴収についての検討も始めています。一方で、今回の企画で知名度をあげ、カタログの広告収入が安定化すると、まず大幅な値上げは避けられるでしょうし、カタログ無料配布の継続も可能かもしれません。これはシンプルに参加者のみなさんに還元されるメリットなのです。

 出店者のみなさんにとっては「今回参加出来るか否か」が最重要なのは承知しているつもりです。しかし、私にとってのプライオリティは文学フリマの「継続開催」にあります。私は「今回の同人誌に勝負を賭けるんだ!」という情熱を“何度も”みなさんに経験していただきたいし、「今回ダメでも次がある」という喜びを“何度も”みなさんに味わって欲しい。だから、第七回文学フリマの5ブースを企画に費やしても、それが継続開催に大きなメリットにあるのであればそれは参加者みなさんに還元されることだという考えなのです。

「それよりも今回参加出来るかが重要なんだ」というみなさんのお気持ちを否定するつもりはありません。そういう情熱に文学フリマは支えられています。とても感謝しています。しかし、あえて語弊を恐れずに言えば、運営サイドである文学フリマ事務局は出店者のイエスマンではありません。このイベントを続けていくために、あるいは一般来場者のために必要なことであれば、そちらを優先させることもあるのです。

 今回の私の話を読んで、「なんだ、金のハナシかよ」と思う方もいるでしょう。しかし、イベントを続けていくためには綺麗事だけではやっていけません。特に運営サイドにとってはそうです。理念と実務のバランスをとるのが事務局の仕事なのです。だからこそ、文章オンリーという地味なジャンルで出店者や一般来場者を呼び込むことができるし、七回も八回も、回を重ねていくことができるのです。


 最後に。今回の企画に疑問を持っている方だけでなく、「こんな話題になっているイベントにワタシなんかが参加してもいいのだろうか?」と申込を躊躇している方がおそらくいるかと思います。もう申込の時間はあまりありませんが、そうやって迷っている方がいたら、まずは応募してみてください。今回が無理でも、来年5月にはまた開催されます。文学フリマは同人誌のイベントだし、継続して開催しているのです。お待ちしています。