文学フリマ×講談社BOX「東浩紀のゼロアカ道場 第四関門&道場破り」
「東浩紀のゼロアカ道場 第四関門」ページにて【東浩紀のゼロアカ道場 FAQ】が更新されました。
どうぞご参照ください。
事務局代表より その2
以下は事務局通信へのコメント等を受けて、事務局代表・望月がみなさまにお伝えするメッセージの第二回目です。第一回目はこちら。コメント(匿名のものを含む)への返信としての意味合いが強いので、「文学フリマ事務局の公式見解」とは趣を異にします。
その点をご了承のうえでお読みください。
ゼロアカ企画について、前回はなぜ「第七回文学フリマ」で実施するのか、それが今後の文学フリマに有用であることをお話ししました。次に、この企画の主旨についてお話したいと思います。
まず、みなさんに再確認していただきたいのは“講談社BOX”“東浩紀”という冠がついていても、企画の主体はアマチュアだという点です。講談社BOX作家陣の書籍や東浩紀の著作が並ぶわけではありません。失礼ながら、ゼロアカ道場生たち自身はほぼ無名の、新人どころかデビューもしていない評論家の卵たちです。
なぜ文学フリマでこの企画を実施するのかといえば、これが新人育成、才能の発掘を目的とした、紛れもない“同人誌のイベント”だからです。だから文学フリマで実施するにふさわしいと考えました。集客だけを目的にするのなら講談社BOX編集部や東浩紀さん自身に出店していただいたほうが手っ取り早いですし効果もあるはずなのです。
また、この企画では「道場破り」という要素が加わることでさらに同人誌のイベントとして、文学フリマのイベントとして特色を打ち出せたと思います。昨今、「文學界」の同人雑誌評終了のニュースが大きな波紋を呼び、文芸同人誌の衰退が叫ばれています。そういった状況の中で「文芸同人誌のイベントが注目を集める」というだけで、それは大きな意味を持つことになります。
また具体的な企画内容についても、ただ質の高い同人誌を作ればよいというだけではなく、売り上げが審査基準になるというのが重要です。「自分で作って、自分で客を呼んで、自分で売る」というのは文学フリマの、もっと言えば同人誌即売会の根元的なあり方だと思います。今回の企画は文学フリマにとって新しいチャレンジであると同時に、原点に通じる内容なのです。
新人育成という点でも、文学の新たな市場としての姿勢を見つめ直す意味でも、今の文学フリマにふさわしい企画です。そして勘違いされている方もいるようですが、講談社BOX編集部だけに得をさせているつもりはありませんし、講談社BOXの知名度に頼り切っているつもりもありません。この企画は文学フリマでやるからこそ意味があるし、話題にもなるのだという自信はあります。言い換えればそれは、文学フリマが“文芸同人誌の最前線”を担っているという自負でもあります。例えばこれを講談社のイベントで実施しても成立しないし、国際ブックフェアでやっても無意味だと思います。文学フリマというリアルな場所でやるから成立するのです。
そして「道場破り」に関しても、私はかなりの期待を持っています。野生の挑戦者がシードされた練習生を打ち破るのは夢物語ではないと思います。
さて、企画の内容以外では、「混雑が心配」という問い合わせ、あるいは批判があります。
混雑対応の方法については前回簡単に概要を説明しました。「これだけではわからない」という方もいるかと思いますが、混雑の見込みは直前までわかりません。その前段階であまりに具体的な混雑対応の手段を公開してしまうと、直前や当日に思わぬ状況が発生したとしても「すでに公知してしまっているので変更できない」という副作用を生んでしまいます。無理に変更したとしても「HPで案内されていたのと違う」ということで来場者に混乱をきたすことになるでしょう。また、そもそも混雑対応の情報は出店参加者よりも一般来場者に焦点を合わせてお知らせしたほうが効果があると考えています。コメント欄にあった「出店参加の申し込み期間内に混雑対応策を提示してほしい」という要望は、イベント運営の観点からはデメリットが大きく、現時点ではあれ以上の説明はできかねます。
もっと踏み込んで言えば、当日の人の流れを完全に予測することは不可能なので、事前にどれだけ混雑対応を詳細に説明してもそれが有効とは限りません。また、一般的に列の並ばせ方などの詳細はあまり公にしないものだと思います。その情報を悪用して横入りするような輩がいるからです。
以上の理由から、現時点ではこれ以上の混雑対応の詳細を求められても一切お答えできません。明確になった段階でお知らせすべき情報だけをお知らせします。運営サイドとしてはそれ自体がすでに混雑対応の一環なのです。
そもそも、混雑対応について心配をかけてしまうというのが運営側としては情けないことであり、申し訳なく思います。しかし、文学フリマは来年には会場を拡大し、より大勢の参加者を相手にしようとしています。事務局がそれだけの力をつけてきたと考えたから、会場の拡大や半年化に踏み切ったのです。みなさんには事務局を信頼していただきたいと願っています。
混雑の話題と通じることですが、集客のためという前回の話題に対して、「この企画目当ての一般来場者は他のブースに回らず帰ってしまうので他の参加者にメリットはない」というご意見があります。
過去、有名作家が参加した際には、そういう現象が見られた部分はたしかにありました。しかし、今回の企画は話が違うと思います。道場生や道場破り参加者が動員した親戚縁者はともかく、この「ゼロアカ企画」に興味を持って来場するのは“デビュー前の評論家の卵の同人誌”が欲しいという人たちです。そういう感覚を持つ来場者が、わざわざ文学フリマまで来てゼロアカの企画ブースだけ立ち寄って直帰するというのは考えにくいことだと思います。
またこれはあえて書きますが、一般来場者がどのブースによってどれだけ短時間で帰宅しようと、それはその人の自由です。事務局や出店者が「有名人のブースにしか行かない来場者は不要だ」とか「メリットがない」などと考えるのは、ひどく自己中心的で愚かな発想ではないでしょうか。
もちろん理想としては、一般来場者がすべての出店者に目を向けてくれるほうがよいに決まっています。しかしそれを押しつけることはできませんし、だからこそ出店者には来場者の目を引くように努力する余地が生まれます。
事務局にとっては“出店者”も“一般来場者”も大事な参加者です。どんなことがあっても、そのお互いが批判し合うようなことにはなって欲しくはありません。
今回はこれで稿を終えます。次回は「文学フリマ事務局は参加者に負担を強いている」というご意見について、私自身の考え、お答えを書いてみたいと思います。