文学フリマ事務局通信

主に文学フリマ事務局代表が書く雑記帳です。

和製外国人名

とある打ち合わせでPRIDEの話題になった。

ヘビー級王者のエメリヤーエンコ・ヒョードル

この名前の表記は謎なのである。


まず、なぜか名前が姓・名の順番になっている。

これは案外気づいていない人も多いが、彼の弟がエメリヤーエンコ・アレキサンダーなのだからエメリヤーエンコが姓なのである。

他にも姓・名の順番で表記されるロシア選手はけっこういる(例えばイリューヒン・ミーシャ)。

これはロシアの公的文書では姓・名・父称の順で表記されるのが原因とされる。

だが、PRIDEで活躍する同じロシア人のイゴール・ボブチャンチンはちゃんと名・姓の順になっているのだ。


さらに言うと、Fedor Emelianenkoであるところのヒョードルはフョードル・エメリヤネンコと書く方が正しいようだ。

なにしろ同じ名を持つあの大文豪は通常フョードル・ドストエフスキーと表記されるのだから。


おなじことはボブチャンチンにも言える。

正確にはイーゴリと表記するべきなのだ(同じ名前の大作曲家は通常イーゴリ・ストラヴィンスキーと表記される)。


ただ、このへんの事情はイリューヒン・ミーシャの例を考えると謎を解明する糸口が見えてくる。

彼の場合、名前はミハイル・イリューヒンが正しい。

そう、「ミーシャ」とは「ミハイル」という名前に対する愛称なのだ。

ここまでくると、本名と違うとか、発音が違うとか、公的文書の表記順といった問題ではない。

確信犯的な名前表記と考えられる。

つまり、おかしなロシア人選手の名前表記は「日本向けリングネーム」と解釈すべきなのだ。

考えてみればエメリヤーエンコ・アレキサンダーは、ロシア読みなら当然アレキサンドルにならなくてはいけないはず。

おそらくは「語感がカッコイイ、強そう」「語呂がいい」といった理由で姓・名の逆転や言語に則さない表記が選択されているのだろう。