文学フリマ事務局通信

主に文学フリマ事務局代表が書く雑記帳です。

感想・5月16日

この日はいよいよ友人の結婚式。

式の行われる彼の実家はソウルから高速バスで2時間~3時間の堤川(アルファベット表記で「jecheon」。発音が難しくて苦労した)という街。

午後1時から始まる式に出席するため、朝の8時過ぎにはホテルを出た。

総勢6人いたため高速バスターミナルにはタクシー二台に分乗して向かう……ハズだったのだが、ホテルを出たところで声をかけてきたおじさんのワゴン車(平たく言えば闇タクシー)に全員で乗っていった。

値段は二万五千ウォン。

なるべく早く行きたかったし、6人で割るからまあいいだろうと向こうの言い値の金額で乗ったのだが、今考えればちょっと値切ればよかった。


高速バスのチケット(一万五百ウォン)を買った後、食堂で朝食をすませた。

こういった食堂でも頼んだ料理にはキムチをはじめとする漬け物系の小皿がいくつも付いてくる。

私の好きな味なのでとてもうれしい。

9時30分発のバスで堤川へ。

疲れも溜まっていたのでバスの中ではずっと寝ていた。

道はほとんど混んでいなかった上、バスの運転手がかなり飛ばしていたような感じで、2時間弱で到着した。

そして式場へはタクシーで移動。

初乗りは千五百ウォン。


式場でようやく新郎である留学生の友人と顔を合わせることが出来た。

新婦も日本に留学していた縁だったので面識があり、式の前にお祝いの言葉を伝えることが出来た。

また彼のご両親とも、お二人が日本を訪れたときに顔を合わせたことがあったので、向こうがこちらに気付いてくれた。

言葉は通じないものの日本から来てくれた私たちに感謝しているようで、お父さんと固い握手を交わした。

それから新郎の日本語学校での友人という方と会い、日本語で私たちに式の一通りの説明や案内をしてくれた。

これは本当に助かった。


韓国の結婚式はやはり日本のそれとはかなり異なっている。

式そのものは四〇分くらいで終わってしまうもので、同じ式場で何組ものカップルが時間をずらして式を挙げてしまう。

なので開始直前や終了直後は誰の式に参列しにきた関係者なのかよくわからない状態になってしまう。

ただ、会場の後ろの方に無関係な人がいたところで皆気にしないようだ。

また会場には新郎新婦の写真パネルが飾られているのだが、これがまた面白い。

スーツとドレス姿の写真だけでなく、韓国の民族衣装、それからゴスロリ的な衣装まで、何パターンもの写真が並んでいるのだ。

しかもことごとくポーズと表情をばっちりキメている。

日本人ならとてもじゃないけど恥ずかしくてできないようなことだが、韓国ではこれが習慣らしい。

新郎も撮影がとても大変だったと言っていた。


式は新郎新婦それぞれの母親が手をつないで入場し、壇上の蝋燭に火を点すところから始まった。

なんとも心温まる幕開けである。

それから父親や兄弟が入場し、新郎新婦の入場となる。

それから先生(と呼ばれていたがどういう位置づけなのかよくわからなかった。役割としては神父の仕事もこなす仲人みたいな感じだった)が中央に立ち、誓いの言葉を確認し、スピーチをする。

最後に日本から来た私たちのことも紹介されてしまった。

新郎新婦の退場で左右からクラッカーを鳴らして、式は終わり。

両親のスピーチすらないのだから、それは早く終わるはずだ。

しかし、このまま写真撮影タイムとなる。

家族、親戚、友人。それぞれで新郎新婦を中心にした集合写真を撮影する。

私たちも入れてもらった。


その後、別のフロアに移って食事が振る舞われた。

しかし食事をしている最中に、新郎が4時から私たちをウナギ料理屋に連れて行ってくれるという話を聞き、全員箸が進まなくなってしまった。

そういえば彼は日本でよく「韓国にもウナギ料理がある。みんなに食べさせてあげたい」と言っていたのだ。

その新郎は今、親戚筋に挨拶する儀式を行っているというので、食事を早々に切り上げて見にいった。

さっきの式ではスーツとウェディングドレスだった二人は、今度は派手な民族衣装姿だった。

ちなみにこの儀式についてはさっきの方が「男の親戚だけに挨拶することになってるんです。まあちょっとアレなんですけどね……」と遠慮がちに説明してくれた。

それで挨拶をすると親戚はご祝儀を渡す、ということらしい。

ただ儀式が終わると、今度はこの民族衣装での撮影タイム。

もちろん私たちも一緒に並んで撮影した。


その後、ウナギ料理屋への移動までやや時間が空いていたので式場外の駐車場兼庭みたいなところで時間をつぶした。

幸い天気はよく、暖かい日であった。

実は私は結婚式に出席すること自体、初めて経験だった。

この時、「ああ、これが結婚式に出席した友人のふとした時の手持ち無沙汰な感じなのか」と考えていた。

すると式場のお手伝いをしていた女子高生たち(もちろん韓国人)がやってきて、私たちを遠巻きにしつつ騒ぎはじめた。

私たち6人の連れの中にド派手な衣装を着た男がいたのと、とても背が高くて格好いい女の子がいたので注目されたらしい。

それからもう一人の男がなぜか「『踊る大捜査線』の人(織田裕二)に似てる!」ということになったらしく、「みんなで一緒に写真撮らせてください」という話になった。(ちなみに背の高い女の子は「ルーシー・リューみたい!」と言われていた)

ともあれ私たちはわざわざ日本から(しかもソウルから高速バスで2時間以上かかる地方の街に)やってきたストレンジャーなわけで、それだけでもう十分面白い存在だったに違いない。

それで写真を撮ったり撮られたりしながら、図らずも楽しい時間を過ごせたのであった。


4時にタクシーで移動。

だんだんと舗装のされていない山道へと入っていくので、みんなで「本当にこれ料理屋に向かってる?」と笑っていたが、果たして山の中にぽつんと一軒、ウナギ料理屋はあった。

ウナギは甘辛のタレに漬けられたものと白焼きの二種類を炭で網焼きにして、漬け物や豆板醤などと一緒に葉っぱでくるんで食べるというもの。

ようするにカルビの肉をウナギにした、と考えればわかりやすい。

大きな違いとしてはサニーレタスだけでなく、しその葉もはさんで食べるということ。

日本で山椒の粉をかけるように、こちらではしそでウナギのくさみを中和するのだろう。

また、甘いワインのような味のお酒(野いちごの酒だそうだ。色は濃い紫だった)が出て、仲間の一人は調子に乗ってベロベロになるまで呑んでいた。


6時20分の高速バスでソウルに戻ることになっていたので、5時半ちょっとすぎには店を発たねばいけなかった。

皿にはまだまだウナギが積み上げられており、まったく名残惜しかった。

またタクシーで高速バスターミナルまで移動。

少し時間が空いたので、近くのコンビニ(ファミリーマート)でおみやげを物色した。

私はそこでラグナロク・オンラインのトレーディングカードを見つけ、RO仲間のおみやげとして三つも購入してしまった。


新郎と彼の韓国の友人達は、私たちがバスに乗るまで見送ってくれた。

素直にうれしかった。

ソウルだけでなく、堤川というやや田舎の韓国で友人の友人達と触れ合うなんて、最高の旅だと感じた。

それから、またここには是非訪れたい、と強く思った。

思いつつ先ほどの酒が回ってバスの中ではほとんど寝ていたのだった。


それからソウルに戻り、ツアーの集合場所のホテルに戻り、ブランドショップばかりの免税店を見て、仁川空港から日本へ、というスキマのないスケジュールで帰国したわけだが、まあその辺は特に珍しいこともなかったのでまとめて記すにとどめる。

気持ちの上では、堤川を発つバスをみんなに見送られた時に、旅の終わりを感じてしまったのだろう。


韓国。

また是非行きたい。

今度はもう少しハングル語を勉強して。